映画鑑賞7 アンダルシアの犬

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シュルレアリスムの傑作と評される、実験的ショート・フィルム「アンダルシアの犬」である。何度見ても意味不明、何もかもがよくわからない謎多き作品だ。日本で言えば「ねじ式」のような超有名なサブカル映画で、視聴者一人一人が様々な見解を持っている。俺も10回くらいは見ているが、考えようとするだけ無駄で、何も考えずに呆然と見るのが一番正しい鑑賞の仕方だろう。

【昔々 ある所に】で映画は始まる。一番有名なシーンであるお馴染みの「剃刀で目玉を切り裂く」シーン。人間の性的嗜好の深淵に迫るフェチの百科全書「フェティシズム全書」に、このシーンについて書かれている箇所がある。ダリは、この場面に三重の「語呂合わせ」的な意味があると考えているらしい。

剃刀で目玉を切り裂く⇒

  1. 観客の目を開く
  2. 目そのものを「切開する」
  3. 男根としての剃刀で処女としての目を犯す

映画が始まり、観客が映画を見る為に「観客が目を開き」、映像の中で理髪師は満月を見つめ美しい想い人を想う。その女性(理髪師は処女だとおもっている)の目を剃刀で切りつける事で、性的満足を得る、という事なんだろうか。サブカルで「目」と言えば、ジョルジュ・バタイユの「眼球譚」は女性器と目の関係を推し進めた。性医学では、女性の目をヴァギナと結びつけることを眼球愛(オキュロフィリー)と言っている。女性の目によって見つめられると性的興奮を覚えるということらしい。ちなみに映画で切り裂いた目は、雌の子牛の目玉らしい。

この場面の後に出てくる目を切られた女性は、目を負傷していない。という事は、剃刀で目を切るというのは『処女であろう愛しのあの女性を犯したい』という理髪師の妄想で、剃刀を研いでいるシーンは『男根としての剃刀で処女としての目を犯す練習』、つまり自慰行為をしているのではないか。そんな勝手な想像をしてみる。

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【8年後…】メイド服?のような格好の男性が首から箱をぶら下げて自転車をこいで街中を進む。楽し気な音楽が流れるが、シュールすぎて不気味にしか感じられない。自転車の気配を感じたのか女性が外を見ると、自転車男は転倒し、頭を打ち付け死亡する。大切な人だったらしく接吻したりなんだりする。箱の中にはネクタイ?が入っており、さっきのメイド服のようなものをベッドの上にのせて祈る。全く意味不明。気が付くと後ろに男性が立っている。男の手の平から蟻がウジャウジャ出てくる。それを眺める2人。ダリは、死と蟻を結び付けて考えていた為、様々な作品で蟻が使われている。ちなみに夢占いだと、蟻がありえない数にどんどんと増え続けていく場合は、何らかの大きなトラブルや問題、異変が起こるかもしれないという警告らしい。蟻は女性の腋毛になり、ウニになる。似ているだけで意味はないと思われる。

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外には手首が転がっており、美しい女性(警察の偉い人っぽい)が杖のようなものでツンツンしている。周囲には、やじ馬が集まりザワザワしている。それを2階から見て、なぜか興奮している蟻の男。手首はさっきの箱に大切にしまわれ、美しい女性は箱を抱えて動かなくなる。これ以上説明しても意味もないのでやめておくw

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「アンダルシアの犬」は、ブニュエルとダリの2人が見た夢が元になっているらしい。ブニュエルの見た夢は、細い横雲が月をよぎっていき、かみそりが目を切り裂く夢。ダリの見た夢は手のひらに蟻が群がっている夢だった。ダリが「そこを出発にして、二人で映画をつくらない?」とブニュエルに提案したのが始まったのだとか。2人は6日間でシナリオを完成させて、その後に15日間かけてブニュエルが映画を作り上げた。今見てもシュールだが、当時もかなりナンセンスな作品だと言われていたようだ。

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