俺がいつも行っている現場に若い作業員さんがいる。現場関係の大きい会社の新入社員で、慣れないながらも下請けのオッサン達に指示を与えている。俺も賃貸営業の時代は、年齢が上の下請け業者に分からないまま指示をしていた。少し偉くなった気になっちゃうんだよなぁ~。その時の社長には「下請け業者を虐めちゃいけない」とよく言われた。まぁ、その社長のパワハラに耐え切れなくて俺はそこを辞めたんだけどな。
その新入社員の大企業はマジで休みがない。休んでいるところを見たことがないし、休憩どころか睡眠もあまり取っていないと言っていた。顔色はいつも悪く、声をかけても返答がない事もよくある。無視とか聞こえてない以前の状態だ。この会社は全員目が死んでいる。俺が到着する頃には既に働いていて、恐らく朝6時からスタート、夜9時くらいまでは働いている。それを毎日。金を使う暇がないから貯金ばかり貯まっていくと笑っていたが、やっぱり目は死んでいた。
この間は、疲れが相当ピークだったらしく、下請け業者から「そうじゃないんだよね。○○って言う意味で言ったんだけど」と嫌味たっぷりのセリフを言われていた。「あれはどうした?」と言われて「あ…」みたいな感じで走り回っている姿を見ると、
金って何だろう、仕事って何だろう
そう考えさせられる。彼の口癖は「もう辞めます」「どれだけ働かせるんですかね」「今日も●時までですよ」と言う限界の声と苦笑い。その日は、特にボロボロで巨大なダンプが現場から出るので誘導して出したら、血相を変えて
新入社員「と!止めて止めて!!!!!!」
と追いかけてくる。俺は慌てて運転手に合図したが、車両がデカすぎてUターンが出来ず、周辺を1周して戻って来た。「さっきはすみませんでした」と言っていたが、誰が彼を責められるだろうか。きっと頭が狂っているに違いなかった。たまに支離滅裂な事を口走ったり、説明した時間が全然間違っていたりもする。彼がもっと幸せな職に就ける事を祈りながら俺は旗を振り続けるのであった。