中学時代の友達とスズメバチが出た場所へスズメバチ探しに行った時のことだった。自転車に乗って目の前を走る友達は、「UNSTOPPABLE 何使ったって止めらんねえ UNSTOPPABLE 誰がやったって超えらんねえ」とブツブツ言っていた。今になって思えばアイツは、あの頃からすっかりHip-hopだった。その後、低身長で丸顔のベビーフェイスだったのに髭を伸ばして、Hip-hopっぽいダボダボした格好をするようになった…。あまりにも決めセリフ風に何度も言うので、「それ何?」と聞いてみた。アイツは、お前もこっちに来るか的な感じでニヤリと笑って「キングギドラ」と言った。
Hip-hopには全く興味がなかった。テレビにラッパーみたいなのが出ていたか定かではないが、頭の悪い思春期男子には、たくさんの情報を処理する能力がないので、見逃した世界は存在しない。Hip-hopもまるで俺の世界になかったジャンルで音楽だったので、興味本位で聞いてみた。そして、すげえカッコいい…。と衝撃を受けた。韻を踏むって言うんだっけ?それが美しいっていうか綺麗なんだよなぁ。あんな筋肉質で、デカくて、見るからに恐怖の象徴みたいなラッパーが、こんなに多種多様な言葉を綺麗に紡いで歌うっていうのは素晴らしい。そして、社会に対するメッセージが激熱!!無茶苦茶カッコいい!!
中学生の頃に聞いていたからこそ異常に興奮した。金、ドラッグ、SEX、闇社会、社会問題、まだまだ思春期の童貞坊主には、まだまだ手に入れられない、見ることの禁じられた世界をこっそり、ひっそりと教えてくれたのはキングギドラの曲なのかもしれない。キングギドラの影響で他の日本のHip-hopを聞いたけど、それ以外でカッコいいと思ったのは般若くらいで、あとはBUDDHA BRANDの人間発電所が死ぬほどカッコいいと驚愕した。 日本のHip-hopのアルバムで全曲素晴らしいと感激したのは、後にも先にもキングギドラの「最終兵器」だけだ。あとは、これありきの『凶気の桜』が…って思ったんだけど、それは映画の時に話をしよう。