6月5日、うちの文鳥が一羽旅立った。原因は不明。先週は、具合が悪い様子など微塵もなかった。昨日一昨日当たりから顔色が悪くなる。餌を食べる元気も水を飲む元気もない。触ろうとすると叫び声を上げて逃げ惑う。くちばしが黒紫色に変色し、顔色も悪くなってきた。これはもうダメかもしれない。木の棒には掴まれているが、動かない。弱っていることは明らかだった。
文鳥の名前は鈴(写真・右)。俺が名付けた。由来は忘れたが、確かごろが良かったからだ。目が小さくて、俺にも嫁にもほとんど懐かなかった。うーたん(写真・左)という乱暴者の爺ちゃん文鳥の妻だ。年齢的にはずっと離れている。うーたんは、なかなか気難しい文鳥で仲間が全くいなかった。しかし、鈴が同じカゴに来てからは丸くなった。お互いに頬や頭を突付いてあげたり(好きというコミュニケーションらしい)、一緒におにぎりの家に入ってたりした。
鈴を買った時、カゴの中におにぎり型の家があった。ぬいぐるみのような柔らかい生地で、鈴はその家の中で休んでいた。鈴を買うと決めた時、その中古のおにぎりを新品の値段で買ってやった。少しでも慣れたほうが良いと思ったからだ。鈴は買った時には、そこそこ大きく人馴れはしなかった。乱暴者のうーたんとまさか仲良くなるとは思わなかった。急に切れたりするうーたんにも鈴は見捨てず付き合っていた。鈴はおにぎり型の家で卵を産んだり休んだり、殆どをおにぎりの中で過ごした。うーたんとすすは仲良しで一緒におにぎりに入ってる姿は見ていて微笑ましかった。
鈴がどんどん青ざめていく。餌を食べるふりをするがもう食べる力もない。一粒の餌がポロリと落ちる。嫁が鈴を手にするとゼイゼイと苦しそうに息をする。飲み物を与えるが飲み込めずに吐き出してしまう。うーたんに寄り添う。うーたんが意識の遠くなる鈴を突く。鈴は下に落ちてしまう。最後は、おにぎりの中がいいんじゃないか。そう思い鈴をおにぎりに入れる。真っ青な顔をおにぎりの入り口に乗せる。もう限界のようだ。小さいかごに移そうとした時、鈴は息絶えた。動かなくなった鈴はとても綺麗に亡くなった。
鈴が何故死んたのか未だにわからない。外傷はなかったので、多分病気だと思う。不衛生にしてたわけでも餌が悪いわけでもないと思うが残念だ。鈴は飼って3年ほどしか経っていない。6羽いるうち年齢の高い順だと4番目になるので、どちらかといえば若い。鈴の遺体は、桜の木の下に深く穴を掘り、大好きだったおにぎり型の家と、家の近くで摘んだ華を一緒に入れた。嫁が「家に来てくれてありがとう」と泣いた。俺達は静かに手を合わせ祈り、小さなお墓を作った。