永沢君/さくらももこ
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特徴的なタマネギ頭、不愛想で暗くて嫌味な事を言って周囲を不快にする。同様に冴えない友人二人を引き連れる彼の名は永沢君。ちびまる子ちゃんの中でも目立たない永沢君にスポットライトを当てた短編作。日本中の冴えない中学時代を送った男子爆笑の内容となっている。スポーツや勉強が特別できるわけでもなく、不良でもない彼等(永沢、藤木、小杉)は、まさしく昔の自分たちだ。普通の漫画であれば登場人物として存在しないような彼等は、中学生男子の生態を包み隠さず見せつけている。

思春期という微妙な時期をコミカルにリアルに描かれている。さくらももこ氏の作品らしく容赦がない。卑怯な藤木と鈍感な小杉は、アニメ以上に卑怯で鈍感に描かれている。不良に憧れたり、ラジオに投稿したり、漫才の練習をしたり、自分を認めてもらいたがったり、自分を変えたかったり、自分は何者なのかを自問自答するモヤモヤしている姿を見ていると何だか懐かしような感じがする。あの時代、みんな自分をカッコよく見せたりするのに必死だった。カッコ悪いのが嫌だった。でもどうすればいいのか分からずにモヤモヤイライラしていた。金もないし、彼女もいないし、中途半端な夢と性欲だけ無駄にあったりして、とにかく全てが不完全で中途半端だった。永沢君は日本中の学校にいる。今の時代にもいる。もしかしたら自分もそうだったかもしれない。パッとしない何でもない男子が、どんな気持ちで中学時代を送っていたのかがよく分かる。

今では国民的人気アニメだが、「永沢君」を読むとガロ寄りな漫画だと感じる。山田花子と作風がそっくり。山田花子は、もっと暗くてエグイが、リアルな学校生活を描くという意味では似た部分があると思う。笑いで言えば吉田戦車のようなシュールさがある。何でもない日常から巻き起こる笑いは、時に爆笑、時にじわじわと笑えてくる。これが天才さくらももこ先生のなせる技か…。

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