SF映画の原点にして頂点と称される「メトロポリス」。人類の記憶と歴史に永遠に残すべきSF映画と言われるSF映画の金字塔。ここまでの褒めちぎる映画がいつの作品かと言うと、今から約90年前。90年前…昭和2年、映画関係者誰も生きてないじゃん!!芥川龍之介が亡くなった年なんだとか。こんなはるか昔に、近未来都市を描いた映画を作るなんて、それだけで凄い。
2026年の設定らしいが、今が2016年なのであと10年後でメトロポリスが近未来と語っていた時代がやってくる。まさか、100年後も、作品が残るなんてフリッツ・ラング監督も思いもしなかったのではないだろうか。SFではおなじみの展開だが、未来都市は上部ばかりのハリボテで、階級社会が露呈していた。上層階に住む限られた指導者階級と、地下で過酷な労働に耐える労働者階級が2極化していた。労働者は完全に社畜で、肩をガックリと落とし、俯き、生気のないまま労働を続ける。その後ろ姿は、絶望と圧力を受け今にも崩れ落ちそうだ。社会的弱者である労働者たちは、文句も言わずロボットのように同じ動作を延々に続けている。Wikiによるとエキストラの数は下記のとおり。
主演俳優の他に端役は750人
エキストラの男性は25,000人
女性11,000人
子供750人
黒人100人
中国人25人
支払った報酬:160万マルク
衣装代:200万マルク
靴:3500足
カツラ:75個
特注の自動車:50台
使ったフィルム:62万メー トル
ポジ・フィルム:130万メートル
費用総額:最低500万マルク~最高1300万マルク
※文献により異なる
1マルクがだいたい65円くらいなので、最高1300万マルクとなると、大よそ8億4500万と言う金額になる。今でこそ何百億という金額を投資した映画が数多くあるが、約100年前の8億4500万円は価値もまるで違うだろう。公開当初は2部に分け3時間半ずつ上映されたと記されている。俺が購入したDVDは、118分(1時間58分)だった。前半後半で3時間半ってことは合計して7時間。さすがに映画7時間は辛い…。
「メトロポリス」は、100年前の映画とは思えない迫力が伝わってくる。サイレントで、色もカラーじゃない、画質も決して良くない。しかし、スクリーンの熱気や臨場感が視聴者の脳裏に焼き付く。とくに怒り狂って暴動を起こす労働者のシーンは、怒号や悲鳴が視覚で伝わってくるほどだ。
映画史上最も美しいロボットと言われているマリアの姿を写される前のアンドロイドは、スターウォーズシリーズのC-3POのデザインに影響を与えている。白黒なのに神々しい光を感じる演出は、見ていて感動する。