読むのは2回目。俺は、昔から国語は得意で、作文や感想文や論文はスラスラ書けた。逆に国語が苦手なクラスメイトは、自分の意見や考え方を書くことに苦戦していた。町田康の『夫婦茶碗』は、小説や文章が苦手な人が興味を持てるような物語だと思う。文庫本でビッチり文章が所狭しと並んでおり、ページを開いた瞬間に「ぐっ!!!」となってしまうだろう。しかし、読んでみると面白い。この面白いは、文章の構成が面白いとか、作者の意図が面白いとか、トリックや伏線回収が面白いとかそういった面白いではなく、漫画的な漫才的な一種の古典のような楽しみ方が出来るのである。
日本で言う古典や落語、海外の戯曲などは、言ってしまえば今でいう吉本新喜劇、漫才、コントの類だと個人的には思っている。ようはお笑いの舞台みたいなものだ。それを何となく畏まった、堅苦しいような感じがするが、一般大衆向けのお笑い的なものだと思う。モリエールの『人間嫌い』 も、モリエールが「高貴な宮廷人や知識人でも、平民でも楽しめるような作品」をということで作っている。
夫婦茶碗もまさにそんな作品で、非常に読みやすく、分かりやすく、ガッツリ詰め込まれた文章を次々と読み進み、あっという間に読み終わってしまう。なんでこんなどうしようもないことをこの主人公は延々と試行錯誤しながら苦しんでいるのか。ついつい呆れて笑ってしまう。なんだか分からないけど読みだすと止まらない。そんな町田康の世界観は、『小説嫌いな』みなさんに是非入り込んで欲しい。