これは映画じゃなくてドキュメンタリーなんだけど、5枚ディスクで752分もあるので、扱いを映画にした。まぁ、とにかく凄い長い。そして、感想がかなり分かれると思う。賛否両論あると思うが、俺は賛の方だ。amazonレビューでボロカスに書いている人たちもいるが、このドキュメンタリーが面白くない人と言うのは、モノ作りができる工程・作っている空間・作っている人間に対する興味がない人なんだと思う。つまり、ジブリの映画を見ているような楽しみだけを欲しがっている。なので、これを見ても意味がない。このDVDは、自分で何かを作りたいと考えている人間が、勉強としてみる映像だと思う。
カメラを回しているのは、荒川さんというディレクターで、この人に関してもレビューでゴチャゴチャ書いてるバカがいたが、俺が見た上ではかなり優秀な人だと感じた。もっと踏み込んだ質問が聞きたかった…とか言うバカなレビューがあったが、そもそも長編映画を作っている現場に長期にわたって取材する中、悩みながら制作している宮崎駿に対して質問責めするのは間違っている。あくまで質問は後回しでいい。重要なのは、宮崎駿が何を考えて、どう思って、作ろうと思っていたことがどのように変化していくのかが見せ場であって、Q&Aみたいな質問・討論番組だったら見る価値がない。そんなに文句言うなら作品だけ見てりゃいいんだよ。
内容は、そのまんまで宮崎駿が「崖の上のポニョ」を完成させるまでを追う。時には厳しく注意を受けたり、普段だったら到底見せてはもらえない場所に連れってくれたり、非常に貴重な映像となっている。宮崎駿が弁当を食べている姿が、ジブリ作品のように美味しそうなのも見どころ。後は、少年のようにはしゃぐ姿と緊張感が漂う神アニメーターの後姿のギャップもすごい。
試行錯誤を繰り返しながら懸命に働く姿を見ていると、ニートや引きこもりや働かない奴はやっぱりダメなんだと思う。自分のお爺さんくらいの年齢の人が、現役のアニメーターに負けたくないと必死に働いている。こんなカッコいいことはない。そして、逆に宮崎駿の何百倍も力や時間があるにも関わらず、SNSで他人の揚げ足ばかりを拾って日々を過ごすことの何と無駄なことか…。プライベートや家庭は、崩壊してそうな生活だが、これが労働者の鏡、働く男のカリスマ性だと感じた。最後のダラダラしないでスパッと終わるところも好印象。