ラジオ体操まで時間があるので、着替えていた。いつもどんな格好していたかも思い出せないので、車にあるものをひっくり返してみる。色々と着替えて、少し暇になったので車の中で鏡を見ながらピンセットで髭を抜いていた。以前は、朝礼が始まる前までに体調がおかしくなり、心臓がバクバクいってパニック発作になってしまったが、もう大丈夫みたいだ。眼鏡をかけた見知らぬ元請けが来たと思ったら、パニック発作で運ばれた時に付き添ってくれたKさんだった。「久しぶりじゃないですか」と嬉しそうな顔で迎えてくれ、「懐かしい顔も来ましたよ」と他の元請けの二人も顔を覗かせた。Kさんに「朝礼で喋りますか?」と聞かれたが、秒で断った。会社のEさんと元請けのNさんには「初日だからならしていってくださいね」と言われ、事務員のOさんは「また賑やかになりますね」と言われる。みんな優しいなぁ。
朝礼ではMさんがリーダーをしっかりやっていて一安心。もう全部お任せするよ。以前は自分がしっかりやならきゃと躍起になっていたけど、別に給料が変わるわけでもないし、どうでもいいわ。現場の人もみんな見慣れない人ばかりで、色々と変わっていた。クソ小説、クソラノベ風に言えば浦島太郎になった気分だ。現在は作業員3名で3カ所に立っているらしい。
とりあえず俺病み上がりなので楽勝な場所に立たせてもらう。永久にここでいい。いざ始まると懐かしい。3年の大半をこの数キロ圏内で過ごしていた。工事はかなり進んでいて、もう風景ごと変わっていた。俺が着た頃からいる下請けの職長さんに「あれ?久しぶりじゃない休んでたの?」と驚かれ、休職していたことを話し「これからまたよろしくお願いします」と挨拶をした。職長さんは「よろしくお願いします」笑顔で返してくれる。普段はサラリと頭を下げて会釈の挨拶だけをする掃除のおじさんも「久しぶりですね」と声をかけてくれ、セメントの運転手も一瞬「あれ?」って顔をしてから手を振ってクラクションを鳴らしてくれた。あー帰ってきた。
相変わらず仕事はしょうもなかった。筋トレの効果もあり、身体の疲れは全くなかった。ただ、久しぶりで何となくモヤモヤするというかウズウズするというか落ち着かない感じだった。後ろから元請けのHさんが来て「やっぱりMさんよりも圧倒的に安心感がありますね」と言って満足げに去って行った。ですよね。とりあえず会社に連絡して再来週(25日以降)からは普通に出たいと言った。どうなるかはわかんないけど。