非常にショッキングである。男性、57歳、肝硬変。入社は俺の半年後、54歳とかで入社したので年齢は先輩だが、仕事としては後輩である。
背が低くて、仕事熱心、真面目で優しい。日焼けしていて、いつもニコニコと笑う笑顔が印象的な人だった。仕事も出来る方で、頼むと断れないタイプ。元々は名古屋でタクシー運転手をやっていた人で、平然と朝夜朝の連勤を車中泊でこなすので、当初は軍人と呼んでいた。人手不足の時はどこにでも駆り出され、俺はいつも体調を心配していた。
ある時、長い夜勤があると言って半年くらい周囲で見かけなくなった。その長い夜勤が終わって戻ってきた彼は十歳以上老け込んだように見えた。顔の皮がダルダルに垂れ下がり、喋り方もモゴモゴしていて、目も虚ろ、会話のリズムも遅い。まるで別人のように変貌し、おじいちゃんのようになってしまった。片交の際も寝坊して戻ってこず、若干酒の臭いもした。歩き方も力なく、俺は休みを取ったり、食事の改善を提案し、昼食用のゆで卵をあげた。
会社から休みを貰ったりしているようだが、金がないのででなくてはならない。結局、片交も難しいという事、それから母親が認知症、父親も泣き言を言わない人だったのに「もう駄目だ」と精神的に追い詰められている。そういう理由もあり、今の現場から離れ、両親が暮らしている地域で働くことになった。移動の話を受けた時、また人員が足りなくなったら呼ばれますよと明るく電話を切ったが、それが最後の会話になった。最後の電話は、卵の話、また組みましょうという話、その時一緒に現場にいたMさんと仲良くという話くらいだった。
もともと体調は悪い方で、煙草と酒と甘いものが大好き、睡眠不足、無理な労働に過剰なストレス、栄養不足、とにかく悪い事ばかりだ。亡くなったと知った時も以外ではなかった。人間の死は年齢順ではないが、優しくて思いやりのある人が亡くなるのは身内じゃなくてもやはり辛い。信号待ちでたまたま前に停まっていた時は、急にパッと降りて栄養ドリンクを渡してくれた。すれ違った時も笑顔で手を振り、一緒に組むときはわざわざ「明日はよろしくね」と電話をくれた。検査入院で亡くなったらしいが、いつものようににこやかな表情で亡くなられたことを願いたい。