おどろおどろしいジャケットに謎のタイトル。これぞ駅前旅館のファーストアルバム「人情味は人肉の味がした」である。ちなみに裏側は、ガロの漫画の様な絵が描かれている。駅前一家と書かれた文字の真下にラモーンズを意識したメンバー4人が並んでいる。ジャケ買いの多い俺は、前もって視聴して購入したが、このジャケであれば視聴無しでも間違いなく購入しただろう。
駅前旅館は、岡山のバンドで前身バンドは「肉弾」という。駅前旅館名義ではアルバム2枚、レコードを1枚発売している。アルバム2枚は、いぬん堂から発売されている。ジャンルはハードコア・パンク。風変わりなタイトルに変則的な演奏が特徴的なバンドだ。曲のタイトルが、「アテンションプリーズ物語」「アンヌ隊員のエレヴェーター健康法」「マ☆タ☆タ☆ビ☆フ☆タ☆タ☆ビ☆」など意味不明で長かったりする。この時点で、只者ではないバンドという事がわかる。歌詞カードを開く、そこには般若心経の如くズラーっと歌詞が並ぶ。とにかく歌詞が長いのだ。ヴォーカル覚えてんの?と驚くくらい結構長い。そして歌詞もタイトルに負けないほど意味不明で難解だ。まるで日記のような歌詞をヴォーカルが歌う…というより読み上げると言った方が正しいかもしれない。「知恵の輪」という曲では、「ちくわの穴だけを食べてみたいな」を連呼しており、とても正気の沙汰とは思えない。そもそもタイトルが「知恵の輪」に対して歌詞のほぼ全てが「ちくわ」というのもクールである。そして、歌詞が長いだけではなく、曲自体も長い。14曲中、7分の曲が4曲、6分の曲が3曲も収録されている。パンクは曲の時間が短いのが特徴的だが、本作では一番短くても3分4秒のねこやなぎのみ。
音楽的には、スターリンが近い。というより影響はアルバムの題字を遠藤ミチロウが書いている点でもほぼスターリンを信者に間違いないと言える。特徴的なヴォーカルの声と甲高いコーラスが魅力的で、変則なリズムがベッタリと脳味噌に焼き付く。アルバム2枚しかないのかーと残念な気持ちにもなったが、これほどのクオリティの曲を作るのはそう簡単ではないだろう。普通のパンクに飽き飽きしてきた皆様に是非とも聞いて頂きたい。狂いたいならこの1枚。