天より下にありし者 交通誘導員 87、88日目 名も知らぬ場所に立ち…
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ジジイが休みを取った為、俺は今まで行ったことのない工事現場へ行くこととなった。そこでは背の低いおばちゃんが職長をしており、警備員歴は10年、資格保持者という輝かしい経歴の持ち主だった。現場はいつも俺が行っている現場の途中にあり、開始時刻も遅い。いつも5時起き6時出発なのに、今回の現場は6時起き7時出発で十分間に合った。場所は住宅街で内容は道路工事のガードマン。

歩行者が多く、特に年寄りがウロウロしている。マスクをして、目をギョロっとさせた危なそうな爺さんが杖を突いてフラフラ歩いて来る。まるで研修ビデオのような状況だが、それなりに誘導。上手くしゃべれないらしくジェスチャーを交えながらモゴモゴ言っている。ジェスチャーから見るに爺さんは、

爺さん『今日は警備員2人なの?あの胸のデカくて身体もデカい女は今日いるの?』

と言いたいらしい。耳は聞こえるようなので「ああ、女の警備員さん?反対側にいるよ。今日は2人」と言うとマスクの前で人差し指を立て『しー』とやって来た。『胸がデカくて身体もデカい』は内緒という事らしい。マスク越しでも笑っているのが分かる。毎日歩いてるんだろうなぁ。

歩行者のほとんどは、「こんにちは」と声をかけると笑顔で返事をし、足早に通り過ぎていくが、中には立ってほしくない場所で立ち止まる人もいて困る。あるオッサンは、ぴたっと止まり世間話が始まった。

オッサン「ここの工事って長いの?」
俺「そうですね。ちょっと私昨日来たばかりなので」
オッサン「今日が初めて?」
俺「いや、普段は○○って場所でやってます」
オッサン「○○か‼結構遠くないか?」
俺「まぁ、1時間かからないくらいですかね」
オッサン「そこって何の工事してるの?」
俺「(工事内容を説明)」
オッサン「どこから来てるの?」
俺「○○です」
オッサン「なら近いな」

とまぁこんな感じでオッサンから受けた質問の回答が次々とオッサンに吸収され、次の質問のエサとなってしまい半永久的に質問が続く事態になった。恐ろしいヤツだ。適当に話を切り上げて誘導したが、暇な場所で良かったとしみじみ感じた。

かなり暇な場所なので何も大変なことがなく時間だけが過ぎていく。ふと目の前にある病院の駐車場に目をやると見慣れた人がこっちに手を挙げ、笑顔で会釈している。彼はいつも同じ現場で働いている作業員さんだ。俺も軽く会釈をするが、名前がわからない。

2日間いたが仕事は簡単で、早めに終わることもあり、ちょっと大変な時は残業代も少し出るらしい。それって最高じゃないか‼こっちは直ぐに帰れないし、ラジオ体操あるし、朝礼で何か書いたり読んだりするし、作業員さんがいなくなっても警備しなきゃならんし、あー文句しか出ない…。

おばちゃん警備員には「また来てくださいね」と言われた。多分また来ることあるなこれ…。

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