サブカル界の鬼才にて神。我らが寺山修司氏が、妻である九条今日子嬢に宛てたラブレターをまとめた本である。寺山修司と言えば言わずと知れた日本のシュールレアリスム先駆者である。そんな寺山修司氏であるから、さぞおどろおどろしいエログロナンセンスなラブレターを書いているに違いないと俺は思ったが。これがとんでもなく甘酸っぱい。九条今日子嬢に対する愛が手紙にたっぷり詰まっている。こっちが恥かしくなっちゃうよぉー。何かの本で読んだんだが、寺山修司氏は海外に行くと珍しい切手や絵葉書を集めていたそうだ。手紙を書くのが大好きだった寺山氏は、どんな相手かによって葉書や切手を使いこなしていたという。仕事の関係で、会うことが出来なかった寺山は、愛を込めて今日子嬢に手紙を何通も送っている。早く会いたい、会ったらこんな事がしたい、雑誌にこんな事が載っていた、自分の演劇が否定された事等、一日の感想や日々の想いを短い手紙の中に凝縮されている。それは愚痴だったり、悲しげだったり、焦りだったり、まるで寺山氏の表情が伝わる様な味わい深く、切羽詰まった手紙だった。詩や俳句を愛するだけあり、短い文章構成の中で、必要最低限な情報を相手に伝えようとする部分は流石と言わざるを得ない。とあるラブレターの最後に「紙上でキスを送ります」という一言があった。この一言がとてもオシャレで素敵だ。寺山修司のような人間は今後現れる事は無いとこの一言を読んだ時確信した。
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