青空文庫5 「雨ふり坊主」夢野久作
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宮沢賢治の様な作品。自然と親子愛を描いた「雨ふり坊主」。「三つの眼鏡」同様に夢野久作の作品とは到底思えない(褒めている)心温まる物語になっている。

主人公は太郎と太郎のお父さん。太郎のお父さんは百姓で、雨が降らなくて困っていた。田圃で食いつないでいるお父さんからすれば、雨が降らなきゃ家族に飯が食べさせられない。そこに太郎がやってきて「雨を降らしてあげる」と言いだす。泣かせるじゃないですか、大好きなお父さんの為に嘘までついて、武雄さんとは大違いだ。太郎の話に笑い転げるお父さんでしたが、太郎はマジだぜ。この間の運動会は、太郎自家製テルテル坊主による晴天であったとお父さんに力説した。お父さんは、「やってみろ。雨がふったらご褒美をやるぞ」とフラグを立てる。

「テルテル坊主テル坊主
天気にするのが上手なら
雨ふらすのも上手だろ

田圃がみんな乾上ひあがって
稲がすっかり枯れてゆく
雨をふらしてくれないか

僕の父さん母さんも
ほかの百姓さんたちも
どんなに喜ぶことだろう

もしも降らせぬそのときは
嘘つきぼうずと名を書いて
猫のオモチャにしてしまう

それがいやなら明日あしたから
ドッサリ雨をふらせろよ
褒美にお酒をかけてやる

雨ふり坊主フリ坊主
田圃もお池も一パイに
ドッサリ雨をふらせろよ」

え?テルテル坊主がやってくれんの?マジ?テルテル坊主は雨降り坊主も出来るのか。別物ではなく、両方いける口なのか。夜のうちに稲妻のオマケつきで大雨襲来。見知らぬ天井、鳴らない電話。次の日にはいいお天気で、池も田も水がいっぱいでみんな大喜び。作業の時間帯には、ぴたっと止ませるあたり、雨ふり坊主の技が光った。アフターケアもバッチリさ。太郎が、雨ふり坊主にお酒を掛けて欲しいとお父さんにお願いするが、雨ふり坊主の姿はなし。シクシク泣き出す太郎にお父さんが言った言葉が深イイ!!

「おおかた恋の川へ流れて行ったのだろう。雨ふり坊主は自分で雨をふらして、自分で流れて行ったのだから、お前が嘘をついたと思いはしない。お父さんが川へお酒を流してやるから、そうしたらどこかで喜んで飲むだろう。泣くな泣くな。お前には別にごほうびを買ってやる……」

何だか読んでいるこっちもニヤニヤしてしまういい話だ。「ドグラマグラ」を書いた狂気の作家も微笑ましい作品を残してるんですね。「ゲゲゲの鬼太郎」と「ぼのぼの」書いてますって言ってるくらいの衝撃だわ。いや、何か違うか…。

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