前日に聞いたことのない名前を聞き、朝礼で会った男性は50代で、とても腰が低い人だった。顔は日に焼け、年齢より老けて見えた。珍しく敬語を悠長に使いこなす人で、丁寧な話し方は警備員っぽくなかった。
警備員をはじめて約半年、元々は名古屋でタクシーの運転手をしていたらしい。名古屋は交通事故ワースト1位で、赤信号になった後に5台走り去るくらい運転が酷いんだとか。そんな彼がなぜ田舎の警備員になったのかは、プライベートなことだし、間違いなくポジティブな話ではなさそうなので控えた。
今日の朝4時まで他の現場で夜の警備員をして、そのままこっちの現場に来たらしい。どうりで汗の臭いがするわけだ。朝の4時に仕事を終えて、1時間運転して、ちょっと食べ物を購入してやってきた。そして、俺たちと働く。信じられない。確実に労働基準法に違反している気がする。だって眠ってないんだぜ?さすがにこの後はないらしいが、そんなに働かなきゃいけないんだろうか?うちの会社は借金している人が多い。そういう人たちは、住むところもないので寮生活となり、会社に飼い殺されている。
そんな彼だが、誰よりも疲れていて眠いはずなのに栄養ドリンクをくれて、塩飴をくれる優しさも持っていた。さぁ、今日も死ぬか…。