読まなきゃ死ねない漫画の一冊。山本直樹先生の最高傑作と自信をもって推薦できる。
本作の感想の前に自分自身の「父親論」について話をさせてもらう。父親と母親の間に産まれた俺にとっての父親は勿論一人しかいない。これを読んでいる貴方もそうだろう。貴方に子供がいれば貴方はその子供にとってたった一人の父親だ。しかし、俺の人生経験上たくさんの父親に育てられてきたと俺は高らかに宣言する。実の父親以外の父親の存在としては、選挙事務所で働いていた時の政治家先生、ブラック企業の頂点に君臨していたパワハラ上司、ブラック企業で俺に事務や経理を教えてくれた(ほとんど身にはつかなかったけど)上司、不動産会社の社長、口も育ちもサバイバルな建築関係の社長。未だに恨んでいる人間も何人かいるが、大切な事を色々な「父親」に教わった。そう考えてみれば貴方の父親も一人ではないかもしれない。
今回推薦する山本直樹先生の「ありがとう」にも強烈すぎる父親が登場する。大まかなストーリーを簡潔に説明すると家族が様々な敵(不良、学校、マスコミ、宗教などなど…)と戦う物語。と言っても戦ってるのはお父さんだけで、お母さんと娘二人はお父さんに巻き込まれ続ける。お父さんが帰ってくる前、お母さんはアルコール中毒で精神が病んで人形みたいになっており、長女は家を占拠した町の悪ガキどもにクスリを打たれて毎日レ●プ三昧、思春期の次女はそんな家に何の感情も抱かずオ●ニーに明け暮れる。そんな家族のもとに数年ぶりに帰ってきた家族思い(家族は迷惑してるw)の熱血お父さんが帰って来る。不良どもと喧嘩し、大暴れ。一人を人質に不良どもを追い払うが、今度は家の前に居座られ、嫌がらせのオンパレード。外は危ないからピザを頼めば、ピザの中には飼い犬の生首‼長女は精神がおかしくなり、次女のオ●ニー姿が週刊誌に掲載され学校で広がり虐めに発展、母親は宗教に心酔しテレビで犯罪者扱い。しらばっくれる学校‼押し寄せるマスコミ‼いつの時代も敵は同じか。
とにかくどいつもこいつもみんな嘘つき、みんな敵。そんな敵とガンガンやりあうお父さん。どんな相手でも決して引かない‼というより引くべき時すら引かないw挙句の果てには、自分の育て方が悪かったと反省して娘を殺そうとする。あんなに大事にしてたじゃないかwと突っ込んでしまう。頑固でワガママで曲がったことが大嫌い、でも家族が大好きで、家を全力で守る姿は美しい。自分もいつか「ありがとう」のお父さんのような勇敢でちょっと狂った父親になりたいと思った。激しくも静かな感動のラストは色々な感情が交差する。絶対に読むべき傑作。