キラーピッケルは何とか立ち上がり、刃の折れたピッケルを手に人間たちに挑もうとしたが、その場には誰もいなかった。周囲を見渡すが、人間の姿はなく、仲間のモンスターの姿もない。キラーピッケルは、ヨロヨロと草むらに向かって歩き出す。
人間の通らない森の奥でキラーピッケルは座り込み、夜が来るのを待った。ポツポツと雨が降り始めたので場所を変え、小さな洞穴で休むことにした。刃の折れたピッケルを見つめる。とても使えそうにない。次に人間と戦う時はどうしよう…。キラーピッケルは不安になった。身体の傷がさっきの戦闘の激しさを物語っていた。明日は1日休もう。全身が傷だらけだ。こんな状態で戦っても勝ち目はない。まず、身体を休めて、これからのことを考えよう。疲れていたキラーピッケルは、目をつむるとすぐに眠りについてしまった。
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作業員A「こんな場所に別荘建てるなんて金持ちが考えることはわからねえな」
作業員B「まあ俺たちは、命令に従ってればいいんだから楽だろ」
作業員A「そうだなー。考えるのは苦手だ」
作業員C「よーし、揃ったしやるか」
作業員B「はあ?3人でやるのか?」
作業員A「6人でやる仕事のはずだろ?」
作業員C「それが昨日辞めちゃったんだよ」
作業員B「おいおい、いくらなんでも工期に間に合わないだろ」
作業員C「そんなこと言われてもなぁ…」
作業員A「あ!おい…職長が来たぞ」
職長「何やってんだよ。早く仕事にかかれ!!……あれ?少ないな」
作業員A「実は辞めちゃいまして…」
職長「辞めちゃいましたって…ん?」
作業員A「あ…」
職長「アイツでいいんじゃないか?」
作業員A「いや、アイツってモンスターじゃないですか」
職長「お前等だって似たようなもんだろ」
作業員A「………」
作業員B「………」
作業員C「え?何見てんの?俺のこと?」
職長「ヘルメットも被ってるし、いいんじゃないか?」
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キラーピッケルは、飛び上がり、刃の折れたピッケルを構えた。疲れて眠ってしまった間に人間に囲まれてしまったのだ。ここで負けるわけにはいかない。命を懸けても戦わなくては…。
キラーピッケル「!!!!」
手の力が緩んでいた為、人間にピッケルを取られてしまった。キラーピッケルは、青ざめてしまう。
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作業員A「おいおい、こんな壊れたピッケル使ってちゃダメだよ。おい」
作業員B「最初は穴掘りやっから、ほい!スコップな。新品だぞ」
キラーピッケル「????」
作業員A「んー暗がりで作業するわけじゃないからライトは要らないなぁ」
作業員C「新しいヘルメットでいいんじゃないか?」
作業員B「そうだな。ほい!おおーピッタリだな。サングラスや軍手は持ってるヤツで間に合わせよう」
作業員A「名前は何て言うんだ?」
キラーピッケル「………」
作業員B「モグラだからモグ公でいいだろ」
作業員A「よーし、じゃあモグ公!こっちで穴掘りだ」
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キラーピッケルは、人間たちに装備を変えられ、指示されるがままに作業をした。人間達は、飲み物や食べ物をくれ、身体を拭く綺麗な布もくれた。
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作業員A「それにてもモグ公のヤツ働くなぁ」
作業員B「3人分は余裕で働いてるぜ」
作業員C「寡黙な奴だけど、大したもんだ」
作業員A「あっという間に終わっちまったな」
職長「おおー、なんだなんだ。数日分の仕事をもう終わらせたのか?」
作業員A「モグ公が頑張ったからな」
キラーピッケル「………」
職長「よーし、早く終わったし次の現場に向かうか」
作業員B「ええーマジかよ」
作業員C「連続は厳しいって」
職長「いいから馬車に乗り込め」
作業員B「へいへい」
キラーピッケル「………」
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キラーピッケルはなかまに なりたそうに こちらをみている
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職長「おーい、モグ公!!早く馬車に乗れ!!出発するぞ!!」
【終わり】